100%とは言えないけれど、金融資産は一般的な運用を続けていれば毎年4%(月0.33%)取り崩しても減る確率は極めて低い。よく言われる4%ルールですが、城下先生という方がなんと1000回ものシミュレーションを行った結果の記事がありましたので紹介させていただきます。少し前の記事ですが今でも十分参考になる、若い層からリタイヤ層まで知っておくべき内容だと思われます。
以下 2017年10月26日 日本経済新聞記事より
公的年金だけでは不足する退職後の日々の食料品や医療などへの支出は、現役時代に蓄積した自己資金で補うことになる。そのためにも自己資金が生涯を全うする以前になくならないように運用しながら、支出していかなければならない。
成功の決め手は資金の引き出し率、金融資産の組み合わせ、余命期間だ。退職後に自己資金を株式と債券で半分ずつ運用しながら、一定の割合で資金を引き出せばどうなるか。毎月の引き出し率を米国の研究で安全引き出し率とされる0.33%、退職後の余命期間を30年とするシミュレーションを1000回行った。
運用成績の前提には1966~2016年の株式と債券の月次収益率を用いた。年間では自己資金の4%を引き出すことになり、同じ引き出し率でも引き出し額は運用好調時にはより多く、運用低迷時はより少ないことになる。
結果は1000回の試行すべてで最終的に自己資金が残った。最終的に残った資金の中央値でも最初の資金の1.4倍近くに増えた。
より現実的な設定にするため、余命期間30年間を初期・中期・後期の10年ごとに分け、引き出し率を年4%、3%、4%とした。中期は旅行などが減少し、後期は医療費が膨らむ前提だ。運用は株式・債券の比率を初期は半分ずつとし、その後は株式の比重を減らし、後期は全額を債券で運用するシミュレーションを1000回行った。ここでもすべての試行で自己資金はゼロにならなかった。最終的に残った資金の中央値は当初資金の1.3倍になった。
資金の引き出し率が適切であれば、生涯を全うするまで自己資金がゼロにならないことが分かった。ただ、シミュレーションは過去のデータに基づいており、将来を保証するものではない。しかし、今後の老後の資金計画を考える上での参考にはなるだろう。
(山口大学大学院東アジア研究科教授 城下 賢吾)